書と蜜蝋 オリジナル作品

新元号アート展 書と蜜蝋(みつろう) 情景[万葉集より]

 

7月に田園調布でその際来場者の方の人気積票上位10名は日本橋のアートモールにて引き続き全作品展示。というちょっと変わった企画の新元号アート展おかげさまで10名の中に入れました。

出品作品は書に蜜蝋(みつろう)をかけて作品を制作しました。

新元号令和の典拠となった万葉集 「于時初春月 氣淑風 梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香」から情景を心に思いうかべ、湧き出て来るイメージをそれぞれ窓からの景色として切り取っていくイメージです

書道であらわしたいこと

私が作品を創るとき、書くときなどに大事なポイントに必ず窓があります
季節の景色の窓であったり、もう一人の自分が外から観る自分の気持ちの客観的な奥深さを覗き見る窓のときも、
深く沈潜(ちんせん)という自分の中に沈みこんでみて、自分の中のものを外に押し出す小さな窓口でもあったりと。いろいろです。

書は字を書くのでどうしても読もうとされることから逃げられないモノで、そうはいっても書き尽くせないコトバとか、言い表せない文章とか。

直接的な伝わり方ではなく、文字1つ書かれてもその文字のまわりに漂うような雰囲気や読めない文字であっても何かを伝える空気感
絵や彫刻のアートと同じように見えないものを表現したい

私の場合はそれが油絵とか木彫などと同じ様に表現するツールの一つが文字であり、表情をつけることの可能性が高い道具が筆だったので書道をやっています

蠟を書道に使う

読むというより、感じるモノを創り出したい気持ちの方が強く
いまから5年ほど前でしょうか。書に蠟(ろう)をかける作品をつくりたい。と急に思い立ちいろいろ勉強しました

途中、なんでこれに蠟が必要だった?とか蠟である必要性って?と思うような失敗作もたくさんあります。

遠い記憶の景色だったり、本当に自分は見たことあったか?沢山読んだ小説の中に入り込んだ時の景色だったのか?現実ではないものなのか?を霞がかかったような曖昧(あいまい)な情景を密蝋(みつろう)という蜂蜜が出来る時に一緒にできる蠟(ろう)を書道に使うことでより自分の心象風景に近い作品が創れてきました

蠟の扱い方などは別に習いにも行きましたが、書道に蠟をかける。【書と蜜蝋】は私佐藤雅嵐だけがやっている制作方法

 

 

すりガラス越しに外を覗いた景色を蜜蝋と書で表現したこともあります

雨降りの外の景色 かみなりと雨

 

書道=文字で読める・内容を限定されてしまう。という直接的なアプローチより、奥行きを出せて自分の記憶に戻れるような、ほのかに見える文字を読まずに感じる。

それが書と蜜蝋(みつろう)の関係です

作業としては計画性とスピードとほか温度管理など。書を書いたら表具屋さんにお渡しして仕上がりを待つ。という従来の書道のスタイルとはかなり違います。

書は軸か額入り。というだけが作品の姿ではなくても良いのではないかな。と私自身は思っています。

展覧会の時にある男性の書家の方に「最初この作品は男性かと思った。女性はこんな手のかかることをしないから。。」

女性の書家がそうなのか?はわかりませんが美大のころから、そしてデザイナーの時もこういった作業や仕事はずっとやってきています。
今、書という表現方法は使っていますが、作品づくりにはこの美大時代、デザイナーの経験で得てきた知識や方法全てを使っての作品制作です

書と蜜蝋作業

書と蜜蝋(みつろう)では書いた書も素材の一つ。組み合わせていって1つの作品。

新元号アート展をご覧いただいた方から文字を変更してでのオーダーをいただきました。途中経過を少しご紹介します

書のうえに蠟(ろう)をかけるとこれだけ奥にいったようになります

最初の計画通りに次の色であったり、書を重ねて、また蜜蝋(みつろう)をかけ、そしてまた重ねて。

 


という作業を繰り返していき、表現したい表情を創りだしていきます

 

こちらがオーダーいただいた作品の仕上がりです。

「月灯りに蘭の芳香」のイメージでつくらせていただいたものです。色はおそらくお好きなんだろうなと思われる色を選んでみました。

最後には銀の箔を置き完成です

日本の平安時代に「襲の色目(かさねのいろめ)」という十二単の色の重なりで季節の表現をしていたのでが、その中で一番上に薄く透き通るような絹を重ねて観る角度や光によって色の表情が変化する様子を楽しんでいた文化があります

書に蜜蝋(みつろう)をかけて楽しんでいるのは「襲の色目」で紗のかかったほのかな色目を楽しんでいた感性と少し近いものがあるのかもしれません。

この記事の書と蜜蝋作品のようにパネル仕立ての作品だけではなく、蠟を活かした作品を創作して育てていきたいと思っています。

書と蜜蝋作品のオーダーもうけたまわっています。ご希望のかたはお問合せからお願いいたします。

過去に製作した書と蜜蝋作品はこちらのページでご覧いただけます